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貝瀨隆男司法書士事務所は大井町・新馬場・青物横丁を中心とする司法書士事務所です。

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過払請求訴訟諸論点ISSUE

(1)悪意の受益者
(2)取引の空白期間(分断)
(3)一部開示
(4)過払利息の新たな借入金への充当
(5)期限の利益喪失
(6)その他(消滅時効の起算点)

(1)悪意の受益者

   

<前提知識>

平成18年改正前貸金業法43条の『みなし弁済』の要件

第43条第1項

貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払った金銭の額が、利息制限法第1条第1項に定める利息の制限額を超える場合において、その支払いが次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払いは、利息制限法第1条第1項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。

 

①消費貸借契約(利息・損害金契約)の締結時に貸主が貸金業者であること。

②貸主が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約または損害金の予約に基づく支払いであること。

③債務者が利息または損害金として指定して任意に支払ったこと。

貸金業規制法17条の規定により法定の契約書面を交付している者に対する支払いであること。

貸金業規制法18条の規定により法定の受取証書を交付した場合における支払いであること。

最高裁平成18年1月13日判決(最高裁HP

「本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,※上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」

 =みなし弁済の要件③「任意性」を否定

 ※ 上記のような誤解とは

「支払期日に約定の元本共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解」

 

<民法704条の悪意の受益者>

「悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。」

 最高裁平成19年7月13日判決(最高裁HP

「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる※特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである」

 ※ 特段の事情とは

「上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか,上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的な根拠があって上記認識を有するに至ったことが必要であり,上記認識に一致する見解があったというだけで上記特段の事情があると解することはできない。」

 

cf最高裁平成21年7月10日判決、同年7月14日判決(共に最高裁HP

平成18年判決の言渡し日以前の期限の利益喪失特約下の支払については,これを受領したことのみを理由として当該貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできない。

 

 ではどのような場合に悪意の受益者であると推定されるのか??

 最高裁平成21年7月10日判決、同年7月14日判決

 「制限超過部分の支払について,それ以外の同項の適用要件の充足の有無,充足しない適用 要件がある場合は,その適用要件との関係で上告人が悪意の受益者であると推定されるか否か検討しなければ,上告人が悪意の受益者であるか否かの判断ができない」

 

東京高裁平成21年11月26日判決(最高裁平成21年7月14日判決の差戻審、消費者法ニュースNo.82)
17条書面及び18条書面の交付の有無及び記載内容について,充分に審理が尽くされた上で,悪意の受益者であるとの判示

 

名古屋地裁平成22年1月14日判決(名古屋消費者信用研究会HP
「本件取引とは全く無関係である,他の顧客との金銭消費貸借の,しかも上記書面の一部に過ぎないサンプルから,上記にいう基礎事実をたやすく認めることはできない。」

 

名古屋高裁平成23年3月11日判決(名古屋消費者信用研究会HP
「貸金業者は,自らが悪意の受益者でないというためには,支払の任意性以外の点においても,みなし弁済の適用要件を充足していない点につき,みなし弁済の適用があると認識しており,かつ,認識していたことについてやむを得ないといえる特段の事情があったことを証明すべき責任を負う

 

その他の判例(以下、名古屋消費者信用研究会HP
東京高裁平成23年3月24日判決(対アコム)
福岡高裁平成23年3月29日判決(対CFJ
大阪高裁平成23年4月20日判決(対プロミス)
東京高裁平成23年6月20日判決(対プロミス)
大阪高裁平成23年6月24日判決(対CFJ

 <17条書面の記載不備を理由に悪意の受益者であると認定した最高裁判例>
最高裁平成23年12月1日判決(最高裁HP)(対CFJ)
最高裁平成23年12月1日判決(消費者法ニュースNo.91)(対プロミス)
最高裁平成23年12月15日判決(消費者法ニュースNo.91)(対アコム)

 リボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な『返済期間,返済金額等』の記載に準ずる記載をしない場合は,※最高裁平成17年12月15日判決以前であっても,過払金の取得につき民法704条の「悪意の受益者」であると推定される

 

  なぜなら、

「貸金業法17条1項6号及び貸金業法施行規則13条1項1号チが17条書面に返済期間,返済金額等の記載をすることを求めた趣旨・目的は,これらの記載により,借主が自己の債務の状況を認識し,返済計画を立てることを容易にすることにあると解される。リボルビング方式の貸付けがされた場合において,個々の貸付けの時点で,上記の記載に代えて次回の最低返済額及びその返済期日のみが記載された書面が17条書面として交付されても,上記の趣旨・目的が十全に果たされるものではないことは明らかである反面,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をすることは可能であり,かつ,その記載があれば,借主は,個々の借入れの都度,今後,追加借入れをしないで,最低返済額を毎月の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるのであるから,これを記載することが上記の趣旨・目的に沿うものであることは,平成17年判決の言渡し日以前であっても貸金業者において認識し得たというべきである。」

 

    最高裁平成17年12月15日判決
「17条書面の交付の要件についても,厳格に解釈しなければならず,17条書面として交付された書面に法17条1項所定の事項のうちで記載されていない事項があるときは,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである」

「仮に,当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務」がある

 しかし、上記3つの最高裁判例は、
①各業者について一定の時期以降、確定的な記載に準じた記載をしている旨の判示
②確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をする以前に過払となった事案

→確定的な記載に準じた記載をするようになった時期以降過払になった場合には貸金業者は悪意でないと主張

 


     <貸金業者の主張>

① アイフル

「元金定額返済方式」であることを理由に「借主は、(返済期間=借入額÷返済元金)という明確な関係を基に、都度の貸付の際に交付された17条書面に明記された『ご利用残高』を利用して、『今後、追加借入れをしないで、最低返済額を毎月の返済期日に返済していった場合、いつ元利金が完済になるのかを把握することができ、完済までの期間の長さ等によって、自己の負担している債務の重さを認識し、漫然と借入れを繰り返すことを避けることができる』」から「『確定的な返済期間、返済金額等の記載に準ずる記載』をした書面を交付しているから、」「『悪意の受益者』であるとの推定を覆す特段の事情がある。」

CfCFJ、プロミス、アコムは「元利定額返済方式」

 

② アコム

「個別貸付ごとに利用者に交付されるATM明細書につき,平成10年6月15日以降,上記『確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載』として,『個々の貸付の時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を定められた返済期間に返済する場合の返済期間,返済金額』の記載を順次実現した。そして,原告らとの各取引においては,原告らの計算によっても,平成10年6月時点では貸金債務が存在していたものである。」

 

③ 新生フィナンシャル

みなし弁済になるので、不当利得の問題は生じない。」「みなし弁済が成立するものと考えており、仮にみなし弁済の規定適用がない場合であっても、利息の収受についてみなし弁済が成立しないことを認識していないため『悪意の受益者』に該当しない。」

 

最近の判例(以下、名古屋消費者信用研究会HP

<乖離理論>

 神戸地裁尼崎支部平成22年12月24日判決(対アイフル)

 大阪高裁平成24年2月2日判決(対アコム)

<親亀子亀理論>

 福岡高裁宮崎支部平成22年12月24日判決(対プロミス)

 さいたま地裁川越支部平成23年1月31日判決(対アイフル)

 高知地裁平成23年2月18日判決(対アコム)

 東京高裁平成23年3月24日判決(対アコム)

 東京地裁平成24年3月22日判決(対CFJ

 

ここで一つの疑問

 17条書面として返済期間、返済金額等に準ずる記載がされるようになったとされている日以降借入れを開始したケースについては、乖離理論や親亀子亀理論では悪意の受益者と推定できないのではないか?

 

→ 東京地裁平成24年4月20日判決(対アコム)(名古屋消費者信用研究会HP

「各回の返済金額は『借入金額が10万円以下の場合は3000円以上,借入金額が20万円以下の場合は6000円以上,以下,借入金額が10万円を増すごとに3000円を追加する』などと変動するものであって(乙13),このような場合,『各回の返済金額』に準じた記載としては,各回の返済期日ごとの返済額の具体的な記載がなければ,借主としては,返済期日までの毎月の返済期日に返済していくべき各金額を把握することができず,自己の負担している債務の重さを認識することができないのであって,上記ATM明細書及び基本契約書の記載をもってしては,『各回の返済金額』に準じた記載がされているということはできず,その他,本件全証拠によっても同記載がされたことを認めることはできない。」

 

 (2)取引の空白期間(分断)

 貸金業者と取引を開始し、その後、約定利率に基づいて一旦完済。さらに数ヶ月~数年後に取引を再開した場合、それぞれを個別の取引として利息制限法の引き直し計算をすべきか、それとも一連の取引として計算すべきか。

キーワード 『過払金充当合意』

基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意

最高裁平成15年7月18日判決(最高裁HP
「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当」(複数の貸付けが同時に存在)

理由
「借主は,借入れ総額の減少を望み複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常」

→ 過払金が発生した当時、他の借入金債務が存在しなかった場合に、当該過払金は,その後に発生した新たな借入金債務に充当されるか。

最高裁平成19年2月13日判決(最高裁HP
「貸主と借主との間で,基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており,第1の貸付けの際にも第2の貸付けが想定されていたとか,その貸主と借主との間に第1貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない限り,第1貸付け過払金は,第1の貸付けに係る債務の各弁済が第2の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず,第2の貸付けに係る債務には充当されない

cf最高裁平成19年6月7日判決(最高裁HP
「弁済によって過払金が発生しても,その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には,上記過払金は,その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。しかし,この場合においても,少なくとも,当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは,その合意に従った充当がされるものというべきである。」

「本件各基本契約は,同契約に基づく各借入金債務に対する各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,上記過払金を,弁済当時存在する他の借入金債務に充当することはもとより,弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である。」

※ 合意の存在を認めた理由
「本件各基本契約に基づく債務の弁済は,各貸付けごとに個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく,本件各基本契約に基づく借入金の全体に対して行われるものと解されるのであり,充当の対象となるのはこのような全体としての借入金債務であると解することができる。」

最高裁平成19年7月19日判決(最高裁HP
「当事者は,一つの貸付けを行う際に,切替え及び貸増しのための次の貸付けを行うことを想定しているのであり,複数の権利関係が発生するような事態が生ずることを望まないのが通常であることに照らしても,制限超過部分を元本に充当した結果,過払金が発生した場合には,その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意しているものと解するのが合理的である。」

最高裁平成20年1月18日判決(最高裁HP
「同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である」

※ 上記合意が存在するというためには
①第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,②第1の基本契約についての契約書の返還の有無,③借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,④第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,⑤第2の基本契約が締結されるに至る経緯,⑥第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合

最高裁平成21年1月22日判決(最高裁HP
「基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含むものであった。」

過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれている」

→取引の空白期間が3年4カ月あった事例について一連取引として計算。

 しかし、第1審から争点になっていたのが「悪意の受益者」及び「消滅時効」についてのみ

最高裁平成21年3月3日判決、同年3月6日判決も同旨

そもそも当事者の間で過払金充当合意があるのか
→「利息制限法の強行法規解釈の法的技術として用いた用語」(弁護士茆原先生)

東京簡裁平成21年4月23日判決(消費者法ニュースNo.83)
①複数の基本契約の締結の必要性の欠如,②高利からの解放,③違法状態の是正,④権利行使の困難性,⑤過払金の清算,⑥改正利息制限法立法化の動向の観点より取引の一連性を評価
(4年2カ月の空白期間、一貫した基本契約無し、契約条件相違)

東京簡裁平成22年1月12日判決
「本件のような基本契約は,限度額の範囲内で反復して借り入れられるという継続的取引を目的とする与信契約であるから,債務者が弁済を滞るなど新たな借受を阻害するような事由が生じない限り取引を継続させるというのが当事者の基本的合意である。完済の事実は,新たな借受を阻害するような事由ではないから,完済したというだけでは契約が終了したとはいえないのであって,基本契約締結後の取引は再借受を含めて基本契約上の取引と推定される。」(1年5カ月の空白期間、利率の変更有り)

<その他の主張>

① 契約期間の更新条項に基づく契約の自動更新
「本契約の有効期間は,契約締結の日から2年間とします。ただし,期間満了日までに当事者から何らの申出がないときは,さらに2年間自動継続するものとし,以後もその例によります。」(プロミス)

プロミスに対する判決
      名古屋高裁平成23年3月11日判決

アイフルに対する判決
      東京簡裁平成22年3月23日判決、神奈川簡裁平成22年2月15日判決、
      神奈川簡裁平成22年1月13日判決

cf最高裁平成23年7月14日判決(最高裁HP

「基本契約1に基づく最終の弁済から基本契約2に基づく最初の貸付け,基本契約2に基づく最終の弁済から基本契約3に基づく最初の貸付け及び基本契約3に基づく最終の弁済から基本契約4に基づく最初の貸付けまで,それぞれ約1年6か月約2年2か月及び約2年4か月の期間があるにもかかわらず,基本契約1ないし3に本件自動継続条項が置かれていることから,これらの期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は事実上1個の連続した取引であり,本件過払金充当合意が存在するとしているのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」

→ 最高裁平成21年1月22日判決をした第一小法廷において、最高裁平成20年1月18日判決の6要素を検討すべきと判示。補足意見にて、平成21年1月22日判決との整合性についても言及。

② 相殺

第1取引終了時の過払金返還請求権を自動債権、第2取引開始時の借入金債務を受動債権として相殺を主張する。

[問題点]
一般に,両債権がいったん相殺適状を生じても,相殺の意思表示以前に受働債権が弁済その他の債権消滅事由によって消滅したときはもはや相殺することはできないと解することが判例・通説

→ 趣旨は弁済を信じた当事者の期待の保護

[相殺を認めた判例]
横浜地裁平成20年9月5日判決(兵庫弁護士会HP
宇陀簡裁平成22年4月27日判決(消費者法ニュースNo.86)
奈良地裁平成23年7月7日判決(名古屋消費者信用研究会HP

cf東京高裁平成21年3月26日判決(兵庫弁護士会HP)、福岡高裁平成23年3月29日判決

いずれも第2取引終了時をもって相殺

最高裁平成20年1月18日判決及び平成23年7月14日判決に準じた判決
     名古屋高裁平成23年9月1日判決(名古屋消費者信用研究会HP

未だに明確になっていない論点として、

① 「併存する取引」に充当することができるか。

参考判例
      福岡高裁平成21年4月16日判決(兵庫弁護士会HP
      いわゆる横飛ばし充当

「一般に,債務者が同一の債権者に対し数個の債務を負担する場合に,その1個が完済されたときは,それ以後の弁済は,これを行う債務者としても,受領する債権者としても,その当時存在する他の債務に充当されるものであり,過払金として不当利得返還請求の対象となるものではないと考えるのが通常であり,とりわけ,当該数個の債務が法所定の制限を超える利息を支払う旨の約定を含む金銭消費貸借契約に基づくものである場合には,借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まない,すなわち,一方で,過払金に対する年5分の割合による利息の請求権を取得するが,他方で,過払金と同額の債務に対する,より高率の年1割5分ないし2割の割合による利息の支払義務が存続するという事態が生じることは望まないのが通常と考えられる。そして,数個の債務が上記のような内容の同種の取引により生じたものである以上,これらの基本契約が同一であるか否かによって上記の事情が異なるものではないし,また,このように解することが,経済的弱者の地位にある債務者の保護を主たる目的とする法の立法趣旨に合致する」

その他の判例
宮崎地裁平成23年11月4日判決(名古屋消費者信用研究会HP

② ①を前提に、併存する取引が利息制限法所定の利率の取引である場合に他の取引の過払金を充することができるか。

前例なし

ただし、前記最高裁平成15年7月18日判決

「・・・民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され、当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当である。」

 

 

(3)一部開示

  貸金業者が、ある時点以前の取引履歴は既に破棄した、または保管していない等の理由で、取引履歴を途中開示し、開示当初の残高(約定利率に基づく残高)を基準にそれ以降の引き直しを主張する場合がある。(ニコス、SFコーポレーション、新生フィナンシャル等)

 

<対処法① 推定計算>

依頼者の記憶、メモ、取引明細等の有無

 

<対処法② 冒頭ゼロ計算>

冒頭残高の主張立証責任はどちらにあるか

過払金の不当利得返還請求における要件事実

YXとが消費貸借契約を締結したこと(貸付年月日、貸付金額、弁済期、利息・損害金の約定を含む)

XYに対し利息制限法所定の利率による利息を超える利息・損害金を支払ったこと(利息の天引きがある場合には、貸付時に天引された金額、天引利息の期間を、元本・利息・損害金の支払いについては支払時期、支払金額、利息等の算定期間を、それぞれ主張する)

(「要件事実の考え方と実務」より)

 

    実質的にも、冒頭残高は,強行法規たる利息制限法に違反する制限超過利率に基づく借入及び返済の結果であり,貸金業者が違法な利息を保有するためには,みなし弁済の立証をすべきである。

 

<立証責任が被告側にあるとした判例>

広島高裁平成17年4月6日判決、神戸地裁平成19年2月16日判決

名古屋高裁平成21年4月7日判決、名古屋高裁平成21年6月18日判決

「そもそも,弁済として受領した給付については,給付の保持を主張する債権者がその主張立証すべき責任を負うと解される。債権者が積極的に弁済を求める場合と弁済として受領した給付の保持を主張する場合とで,給付保持権原(債権)の主張立証責任に変動が生ずるというのは,要件事実の主張立証責任に関する法律要件分類説の考え方と相容れないから,上記のように解するのが相当である。すなわち,弁済の一部又は全部が不当利得であるとしてその返還が求められた場合,債権者は,給付保持権原(債権)の発生原因事実の主張立証を,弁済者は,当該給付保持権原の発生障害事実や消滅原因事実の主張立証責任を,それぞれ負うと解される。」(神戸地裁平成19年2月16日判決)

 

依頼者の記憶、メモ、取引明細等の有無

→ 陳述書の作成

 

 

(4)過払利息の新たな借入金への充当

過払金に対して発生する利息を新たに発生した借入金債務に充当することができるか。

<貸金業者の主張>

① アイフル

「仮に被告が悪意の受益者であっても、過払金に対して発生する利息を新たに発生した借入金債務に充当する理由はない」

② オリコ

「過払金利息は,原告から被告に対して弁済として提供された給付ではないから弁済の充当に関する規定を適用する前提を欠き,被告が原告に対して貸付けた金員に充当されることはない」

③プロミス

「過払金に対する法定利息は、その後発生する新たな貸付金債務に充当することなく、別途清算すべきである」

<反論例>

① 過払金充当合意に過払金利息を充当する旨の合意も含まれる

② 民法491条の適用ないしは類推適用

その結果

町田簡裁平成24年5月31日判決(未搭載)

「過払金について,元本と法定利息が存在する場合,そのいずれかが他方に先立って新たな借入金債務に充当されるかは,過払金の充当に関する合意の内容に基づいて定められるべきであるが,借主及び貸主の合理的意思並びに民法491条の趣旨に鑑みると,法定利息を元本に先立って新たな債務に充当することが合意されていると解するのが,相当であり,被告の主張は採用できない。」

その他の判例(以下、名古屋消費者信用研究会HP
大阪高裁平成24年4月25日判決(対プロミス)
東京高裁平成24年4月26日判決(対アコム)
名古屋高裁平成24年5月25日判決(対オリコ)

 

(5)期限の利益喪失

返済が1日でも遅滞したことがある場合、債務者は遅滞の時点で期限の利益を喪失しており、以後は、利息制限法4条に基づく遅延損害金の利率となるか否か。

 

<貸金業者の主張>

最高裁平成21年4月14日判決を根拠に期限の利益喪失を主張(エイワ)

「上告人が,上記期限の利益の喪失後は,被上告人Y1に対し,上記のような,期限の利益を喪失したことを前提とする記載がされた書面を交付していたとすれば,上告人が別途同書面の記載内容とは異なる内容の請求をしていたなどの特段の事情のない限り,上告人が同書面の記載内容と矛盾する宥恕や期限の利益の再度付与の意思表示をしたとは認められないというべきである。そして,上告人が残元利金の一括支払を請求していないなどの原審が指摘する上記4(3)の事情は,上記特段の事情に当たるものではない。」

 

参考判例

最高裁平成21年9月11日判決(平成21年(受)第138号)(最高裁HP

「上告人は,被上告人が期限の利益を喪失していないと誤信していることを知りながら,この誤信を解くことなく,第5回目の支払期日の翌日以降約6年にわたり,被上告人が経過利息と誤信して支払った利息制限法所定の利息の制限利率を超える年29.8%の割合による金員等を受領し続けたにもかかわらず,被上告人から過払金の返還を求められるや,被上告人は第5回目の支払期日における支払が遅れたことにより既に期限の利益を喪失しており,その後に発生したのはすべて利息ではなく遅延損害金であったから,利息の制限利率ではなく遅延損害金の制限利率によって過払金の元本への充当計算をすべきであると主張するものであって,このような上告人の期限の利益喪失の主張は,誤信を招くような上告人の対応のために,期限の利益を喪失していないものと信じて支払を継続してきた被上告人の信頼を裏切るものであり,信義則に反し許されないものというべきである。」

 

cf

最高裁平成21年9月11日判決(平成19年(受)第1128号)(最高裁HP

「期限の利益を喪失した後も元利金の一括弁済を求めず,同被上告人からの一部弁済を受領し続けたこと(以下「本件事情①」という。),及び本件各貸付けにおいては,約定の利息の利率と約定の遅延損害金の利率とが同一ないし近似していること(以下「本件事情②」という。)」、「期限の利益を喪失した後に本件貸付け③を行ったこと(以下「本件事情③」という。)」「のみによっては,上告人において,被上告人Y1が本件特約により期限の利益を喪失したと主張することが,信義則に反し許されないということはできないというべきである。」

 

<ボトルキープ論>

期限の利益を喪失したとされる日までに①支払った元利金の累計額と、その日までに②支払われているべき約定の元本及び利息制限法所定の制限利率における利息の累計額を比較した上で、前者が後者を超えている場合には、同日に期限の利益を喪失したことにはならないという考え方

 

参考判例

最高裁平成18年1月13日判決(最高裁HP

「支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。」

 

松山地裁西条支部平成19年3月9日判決(兵庫県弁護士会HP

横浜地裁平22年11月5日判決(消費者法ニュースNo.87)

 

 

(6)その他(消滅時効の起算点)

消滅時効の起算点については、前記最高裁平成21年1月22日判決によって、「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」と既に取引の終了した時点であるとの判示により解決が図られているが、上記「特段の事情」があるとして争われることがある。

 

<貸金業者の主張>

①シンキ

  最終貸付日から数回目の返済において支払いを遅れ、その後7年間支払いのみ継続していた事例において、貸金業者は、与信悪化したと判断し、借主への貸付けを停止していたのだから最高裁平成21年1月22日判決のいう特段の事情があるといえ、貸付けを停止した時点から消滅時効は進行する。

 

②プロミス

新たな借入を行わないとの合意があった。(前記東京高裁平成23年6月20日判決より)

 ※ 特段の事情とは

「同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」

 

<反論例>

→ 最高裁平成21年1月22日判決のいう「新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点」とは、借主が過払金返還請求権を行使したことにより,または貸金業者が貸金の一括返済を求め,貸金返還請求訴訟を提起した等により,文字どおり継続的な金銭消費貸借取引が終了し,もはや将来に向かって,新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった場合を指すのであり、被告の主張する特段の事情があるということはできない。


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